命の器

2003年6月7日
あまり堅い話ばかり書いていると息が詰まるので、医者漫画でも突っ込んでみようかと。

で、今回は「命の器」いのちのうつわです。
主人公響子は産婦人科の女医。25歳で開業医となった強者です。大草原の小さな家のごとく子供がわらわらと増えていきます。一見ほのぼのとした物語ですが(初めの頃はレディースコミックらしかった)、中絶手術をしたら生まれた子供が産声を上げたので口を塞いだり、足位(逆子の中でも一番危ないやつ)なのに帝王切開をやめてお腹を押して出そうとしたり(マヨネーズか?)、電車の中で産気づいた人がいたので、電車の中で生ませ、次の駅で救急車に乗せたが産婦の観察が不十分だったのかその人は病院に着くなり死んでいたり(ももこ、お前の母ちゃん殺したの響子かも知れへんで)、さらにその子供を実の父親に返そうとしたら奥さんにつれて帰れと言われたので黙ってつれて帰ったり(誘拐だろ)、それはまずいだろと思われるような出来事が。

怪しい行動が集大成されているのが第53話。響子先生が自分のお腹をピコピコ音のする超音波診断装置を使って見ているシーンから始まります。そんなことは関係なくこの回から突然現れた栄養士の山口先生が中心となって話は進みます。

山口先生が帰宅すると家の前に妊婦が倒れています。山口先生はその人を山野産婦人科まで送ってあげました。妊婦さんは出産まで入院になりました。次の日その人と山口先生の会話。

「あなた山口貴和子さんね」
「どうしてあたしの名前をご存知なの?」
「あなた あたしを知らないの?」
「どこかでお会いしましたっけ?」
「そう、知らないの!!」
ぷいっ

妊婦さん(奥野あけみ)の態度にむかついた山口先生は報復を行います

あの人だけお昼はスペシャルヘルシーメニューにしてやるわ!

たかだかあれだけでこの仕打ち。ところが奥野あけみさんの子供の父親が山口先生の夫であったことが発覚。山口先生は取り乱しますが、響子先生たちに慰められ落ちつきます。そして奥野あけみさんは無事出産。その後も病室で女二人のバトルが繰り広げられます。

奥野「この病院ケチね!!少ない」(朝食を見て)
山口 (スペシャルヘルシーメニューだもん)

この時点で産後二日。いくらむかついたからとはいえ授乳期のおかあさんにヘルシーメニュー。

さて、ここからが最大のダメポイントです。奥野さんが生んだ赤ちゃんは黄疸がひどくて検査をされていました。そして山口先生は院長室に呼び出されます。

山口 「ええーーーっ 信吾さんの子じゃない?」
響子 「赤ちゃんの黄疸は血液不適合が原因でした!山口さん(夫)はO型だから血液不適合になるはずないし、念の為奥野あけみさんの血液型も検査したらO型でしたし…二人の間にA型の赤ちゃんが生まれるはずはないんですよね…」
響子 「だから赤ちゃんは山口さんの子じゃありません!!」

 まず響子先生の血液不適合に関するアプローチのしかたが問題。ABO式の血液不適合とは母親のもつ抗体が胎児に入りこんでしまうことをいう。この場合奥野あけみさんはO型で抗A抗体と抗B抗体を持つ。赤ちゃんはA型で母親の持つ抗A抗体に赤血球がこわされ黄疸が出てしまう。要はO型の母親にA型かB型かAB型が生まれれば良いのだ。つまり父親の血液型はまるで関係なし。「念の為」にした検査のほうがよっぽど大切である。
 つぎにマズイのがO型とO型の間には絶対にA型がうまれることはなく、だから山口夫は本当の父親ではないと断言してしまった事である。実際にO型の両親からB型がうまれたことがあり、親子鑑定にまで発展した。血液型だけで親を決めるのは大変危険である。
 そしてなによりも一番マズイのはその事実を奥野あけみでも山口夫でもなく、山口先生のほうに告知した事。これは完全な秘密漏洩罪にあたり刑法で罰せられる。後どうなるか予測しろよ。スペシャルヘルシーくらいじゃすまないぞ・・・

結局奥野さんは行方をくらまし、赤ちゃんは「何の関係もない」山口夫妻に引き取られるのでした。

めでたしめでたし。

コメント

お気に入り日記の更新

最新のコメント

この日記について

日記内を検索