THE 外科医

2005年7月7日 ゲーム
とある外科病院の当直室はPS2完備です。探せばPS1もSFCも初代FCも出てきます。
当直室で家捜ししてやっぱり衝撃的なのはそっち系の本なのですが、お人形専門誌はやめてほしいです。誰がそういう趣味なのか気になって仕方ないから。

当直中は監禁と同じですから、暇つぶしにゲームを買ってみました。THE 外科医。

 舞台は聖都大学医学部付属病院一般外科。大学病院には権力と出世だけが一番大切で患者のことなど考えない医者がはびこっていなくてはならず、そうでなければ出世できません。当然ピラミッド社会。ところがこの医局において一番偉い久木教授の肩書きを取説でみると・・・一般内科
一般内科の教授が、患者の執刀医を決め、その腰巾着の心臓血管外科教授が一般内科の教授の顔色をひたすら伺いながら一般外科の教授に命令するという一般内科>心臓血管外科>一般外科という現在の日本における一般的な医局構造とは全く異なった制度の大学のようです。ちなみに一般外科の教授は教授選で選ばれたわけではなく、一般内科の教授の一存で教授になったもよう。

 主人公は32歳8年目の外科医。どうやらその後の話の流れから一度たりとも大学から出たことがない模様。というかこの大学には関連病院はないようです。そのためか8年目なのに虫垂炎の手術くらいしかやったことがありません。8年目の医者が3人そろってまだペーペーだからとつぶやいています。こいつら8年間何やってたんだろ。

 ただこのゲームの但し書きとして
使用されている医学用語や医療に関するものは、実際とは違う場合もあり、またゲーム用に変更している部分もありますのでご了承ください。なお平成15年度の医学情報に基づいて作成されています
とかかれています。ですから大分少々現実離れしているところは見逃してあげなくてはなりません。

 さて、主人公は最初に急性虫垂炎の手術をすることになります。「手術ゲーム」の基本として虫垂切除術は確固たる地位を得ているみたいです。ゲームとしてはタイミングよくボタンを押すことが基本で本物の外科医だからといってアドバンテージは一切ありません。
 お約束がすんだところで吐血の救急患者が来ます。胃潰瘍からの出血を疑いますがいきなり手術室へ運ばれます。とりあえず内視鏡でもしたら・・・とつぶやくとOP場でカメラ。クリッピングとかはせず、潰瘍を焼いてなおしてました。
 つぎも急患でいきなり?型解離です。手術するなら開胸ですが開腹してしまいました。へそ上を切ると心臓がでてきたんですけど、この患者は人間なんでしょうか
 急患3連発で難易度が上がってきたなと思ったら次は胃がんstage?Aです。胃がん治療ガイドラインによればIAだとEMRか縮小手術(部分切除)が標準治療になっています。術前のカンファで一般外科の教授は腹腔鏡手術を提案します。ところがやっぱり手術室で内視鏡です。どうやら教授は腹腔鏡と内視鏡がごっちゃになっているみたいです。しかも術後に教授に叱られます。

あの程度で外科医のつもりか

内視鏡で外科医を評価されても困ります。

 次の症例は食道癌。やっぱり内視鏡で粘膜切除。そしてまた術後に教授に叱られます。

あの切開はなんだ?

切ってねえよ。

腸閉塞の手術のときは壊死した腸管を切除して吻合するときに太さが同じでなければならないらしく、太さをあわせるのに四苦八苦。間違えると助教授にしかられて執刀医交代です。腸閉塞だと狭窄部より口側の腸管が拡張しているのが普通だと思うんですけど。理不尽な。

 たまに大動脈瘤や腸閉塞で開腹手術をするものの、胃がんや食道癌ではリンパ節郭清を含む胃切除を行うのが標準のstage?でも内視鏡治療を行う外科医。開腹、リンパ節郭清なんて絶対しません。ひたすら患者の体力をいいわけにして、根治性のない手術をする外科医のほうが一般人うけがいいようです。

 このゲームを現実的なものに改良する場合、一番大切なのは、手術の適応とか医療用語とかの以前に外科医とはどういう仕事をする人かということを製作スタッフに教育することだと思います。

内視鏡手術は外科医の主な仕事ではありません
することはあるけどさ。

 どっちかというと使用されている医学用語や医療に関するものは、実際とは異なり、また大部分はゲーム用に解釈しなおしていますのでご了承ください。とただし書きを変えたいくらいのこのゲーム、専門的な部分はこれくらいにしても、ストーリーもぶっ飛んでいます。

 一般外科の教授は昔肝移植しないと助からない患者を助けるため日本での肝移植を申請したが、却下され仕方ないので渡米して移植の準備を進めていました。ところが準備が整って帰国するとその患者はすでに肝移植されてしまっていたのです。
しかもその患者は教授の奥さんでした。

ありえねー!

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