地域医療の崩壊の危機が大問題になっています。理由は二年前からはじまった臨床研修制度で研修医が都会に流れていったからだとか。

その理由自体は別に間違っていないと思うのですが、そもそも臨床研修制度とはなにを目的としてはじまったのかちょっと復習してみましょう。厚生労働省のサイト
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/rinsyo/index.html
を参考にして簡単に要約すると厚労省はこう考えていたようです。

研修医の多くが大学医局に所属するために、専門はできるがプライマリケアができなくなる。
プライマリケアができないから夜間救急のたらいまわしなんかが起きるんだ!
そもそも研修医がアルバイトで夜間に当直するから医療事故が絶えんのだ。

ゆえに

医局に所属させずにローテートさせれば新生児(資料に本当に書いてある)から老人まで診られる医者ができあがるはず。
それぐらい診られれば、夜間救急だって地域医療だって楽勝。これらの問題は解決する。
小児や産科も診られるわけだから、小児科産科不足も解消する。
ついでに医療安全について厚労省が本気で考えているように見せるため研修医のアルバイトは禁止する!
悪の組織「医局」もこれで終わりだ、ふはははは。

そして二年の時が流れました。

地域の病院は一部閉鎖されたり売られたり。へき地医療は虫の息。
産科は不足。小児科も激不足。
救急も一時、開業する前に義務化しようと血迷うくらい人手不足。
一向に減らない医療事故。(報道されている件が事故かどうかいつも微妙だが)
アルバイトせずに生活できるように補助金一杯出したのに、さちが研修医のころとほとんど変わらない研修医の給料。
医局に頭下げるのがイヤだからつぶしてやろうと思ったのに、人手不足で結局教授に頭を下げにいく派目に・・・。

厚労省「なんでだよー!ボクの作戦は完璧だったはずなのにー!それもこれも研修医が都会志向だからいけないんだ!」

ことごとく想定外(厚労省にとって)な事態が巻き起こった新臨床研修制度。
「ゆとり教育」並みに短命になるかもしれませんね。

コメント

北進計画
2006年2月13日2:02

今晩は。いつも興味深く拝見させていただいております。 一つ疑問があるのですが、2年間の、市中病院等での研修を終えた研修医は、大学医局に属すようになるのでしょうか? よろしければ、教えていただきたいのですが。 失礼いたします。

ブログ脳外科医
脳外科医
2006年2月13日7:38

アルバイトしながら大学院に行くひとは大学医局に属すでしょう。臨床志向でかつ優秀な医師はレジデントとしてブランド病院に残れるでしょうからアルバイトで時間が無駄になる大学にはもどらないでしょう。その他で大学医局にわざわざ入局するのはどういう理由になるのか。それは診療科の選択と研修医次第ではないでしょうか。

北進計画
2006年2月13日13:42

 脳外科医さん、御返答ありがとうございます。脳外科医さんの日記は、考えさせられることがあり、非常に勉強になると感じております。

さち
さち
2006年2月13日20:37

代わりにお答えいただきありがとうございます。
大学院の位置付けは今後どうなって行くんでしょうね?
博士号自体要らないといわれるようになるかもしれませんね。
以前に医局は潰れないとか書いたけど、潰れるかなー?
田舎では潰れないと思うんですけどね。規模は小さくなっても。

ブログ脳外科医
脳外科医
2006年2月13日23:19

医局(という言葉は使用禁止なのかも)はなくなりませんが,構成員がだいぶん変わって教授,助教授,医局長と大学スタッフ,大学院生,そして研修後でまだ半人前の医局員ということになっていくのではないでしょうか.

ブログ脳外科医
脳外科医
2006年2月13日23:33

大学院の位置付けは研究者の育成ということにしないといけないと思いますが,今後は医学研究にも有用性が強く求められるようになると思われるので,今までのような自己満足型の研究は難しくなるでしょう.そうなると地方医大の研究は予算面で困難になり大学院に行っても博士号をとるのはかえって難しくなるのではないかとも思います.

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