「医師不足は適正配置で」保健医療科学院が予測と提言

 大学医学部の定員を広げて医師の数を単に増やしただけでは、30年経過しても病院の医師不足は解消しない―。 こんな将来予測を国立保健医療科学院の長谷川敏彦・政策科学部長がまとめた。

 医師不足の対策は、医師の増員より、医師の適切な配置が重要であることを示す研究成果として注目される。

 予測は、2040年までの医師数と患者数の需要と供給のバランスについて解析したもの。

 現在は、患者数に対して、必要な医師の数が少ない状況になっているが、20〜30年後にはこの需給バランスが均衡し、数の上では医師不足とは言えなくなるという。

 しかし、医師は労働条件の厳しい病院勤務から、開業したり診療所に移ったりする傾向も加速するため、病院勤務医は将来も横ばいか、微増にとどまると予測。

<医師不足>医学部定員5%増でも30年まで効果なし

 医師の偏在や勤務医不足解消について検討する「医師の需給に関する検討会」(座長、矢崎義雄・国立病院機構理事長)が29日開かれた。医師が最も不足する場合、供給は2035年ごろまで需要を下回り、医学部の定員を5%増やしても、30年ごろまではほとんど効果がないという。

昔からモノは言いようと申します。この記事はその典型例でしょう。みなさん、この記事を読んでどう思われましたか?
医学部の定員を増やしても医師不足は解消しないなら、定員増やさずに医師を強制的に僻地へ行かせる法律をつくればいいじゃーん!!そう思いませんでしたか?だって、そういう風に読ませるように書いてあるんだもの。でも結局は2030〜35年ごろまでは供給が需要を下回るわけですから、どれだけ頑張って適正配置しても足りないにきまってます。

「医学部の定員を5%増やしてもほとんど効果がない」というくだりも実はとんでもない仮定です。現在の医学部の定員はだいたい一大学あたり100人を切っています。90人定員だと5%増とは94人か95人になるということ。前回も書きましたが、50歳までが当直可能年齢と仮定するとそのころの定員の120〜130人以上に増やさない限り医師数は減っていくのです。つまりは仮定がおかしいわけです。医学部定員を30〜40%増にすれば8年後には効果が期待できるかもしれません。でも5%ではいつまでたっても効果など現れるはずがないのです。病院勤務を続ける割合をどう予測しているのかわかりませんが、以上の仮定だと、50歳までの医師数は今後どんどん減り続け、現在90人定員の世代が50歳を迎えたあと95人定員で微増してプラトーに達します。50歳までの医師数は現在より増えることは永遠にないため、病院勤務医も増えることはないのです。「医師は労働条件の厳しい病院勤務から、開業したり診療所に移ったりする傾向も加速する」とされていますが、もしそうなら、病院勤務医は減少していくはずです。

30年後に効果がでるとされているのはなぜかというと、団塊の世代が死に絶えて需要が減るからでしょう。

そもそも国立保健医療科学院とやらのエライ人の予測がきちんとしていれば、いまの医師不足の状況はあり得ないと思います。
こんな偏った報道を行って、医師の配置に関する世論を高めようとしているのでしょうが、騙されるほうも騙されるほうですね。いや、みんなわかってやってるのかも。国立病院機構なんて万年人手不足だし。

コメント

ブログ脳外科医
脳外科医
2006年6月7日11:58

お疲れ様です.元気なようで安心しております.医師定数の話にはれます.医師が多すぎて困るとはいったいどういうことなのか理解できません.医師の適正な配置とは何なのかもわかりません.ですから,これらを理論的に解決できるとはとても思えないのです.

さち
さち
2006年6月13日20:11

私は厚労省は「適正配置」すらするつもりがないのだと思います。医師会の反対が強くてできないなどなど、理由をつけて医師を悪者にして自分は逃げ切るつもりではないかと。

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